185系からE257系へ置き換えられたら「踊り子」「ながら」はどうなる?

てつトピてつコラム列車車両

先日、JR東日本の185系がE257系へ置き換えられるとの報道がありました。

置き換えとなったら編成や運用がどうなるのかを考えてみました。

19.11.28追記 2020年春から〈踊り子〉にE257系2000番代・2500番台の投入が発表されました。0番代・500番代をリニューアルし、9両編成と5両編成に組成します。

2020年春から〈踊り子〉に後継車両のE257系2000・2500番代を投入決定
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18.5.17追記 E257系の東海道線導入が発表されました。時期は未定ですが、中央線のE353系追加投入によるものです。「踊り子」に使用されると思われます。

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※この記事のもととなる、前回の記事を見たい方はこちらからどうぞ

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東海道線転属後のE257系の編成

現在、E257系0番台は基本9両+付属2両の11両編成、185系は基本10両(7両もあり)+付属5両の15両編成です。長さもですがグリーン車の数も異なります。

中央線(松本車両センター)から東海道線(大宮総合車両センター)へ転属したら、E257系の編成・組成はどうなるでしょうか。

現状の「踊り子」の輸送力は供給過剰

JR東日本185系 踊り子105号 修善寺行き クハ185-102 @東京

現在、定期「踊り子」号(毎日運転される列車)の編成は、東京~伊豆急下田間運転の列車が10両編成(基本編成)で3往復、東京~修善寺間運転の列車が5両編成(付属編成)で2往復となっています。土曜・休日には本数が増え、7両編成での運転もあります。

修善寺発着の「踊り子」は、東京~熱海間で基本編成と併結しているので、15両の長編成で運転されています。この15両編成は、在来線特急列車では最も長い編成です。

しかしながら、都市間輸送の特急列車ならまだしも、観光・行楽・リゾート向けの特急列車としては、正直過剰な輸送力な気がします。

上の写真は平日に東京駅で発車直前の踊り子105号(東京9:00発)の修善寺行き最後尾の15号車ですが、15号車の車内は乗客ゼロでした。始発駅ということもあるかもしれませんが、途中の横浜駅などで乗ってきても空席が目立っているだろうと思います。

「踊り子」に限っていえば、現状の185系は需要に比べ明らかに車両の数が多すぎます。

しかし編成の両数を減らせない事情もあります。次に挙げる「湘南ライナー」があるからです。

「湘南ライナー」運用を念頭に置く必要が

現在「湘南ライナー」は下り9本、上り7本が運転されています。また、新宿発着の上り「おはようライナー新宿」が3本、下り「ホームライナー小田原」が2本運転されています(いずれの列車も185系以外の運転を含みます)。ライナー列車の元祖ではないですが、現在でも有数の運転本数です。

編成両数は7~15両ですが、いずれの列車もグリーン車が1両分以上連結されています。

これに対して、現在中央線で走っているE257系のグリーン車は半室(0.5両分)です。かつてはE257系も使用されていましたが、現在は東海道線のライナーからは運用撤退しています。

185系は「踊り子」よりもむしろ「湘南ライナー」の方が現在ではメインの運用です。185系をE257系に置き換えるとなると、こちらのライナーのことも考慮する必要があります。

E257系が東海道線に転属したときの編成は?

「踊り子」と「湘南ライナー」の兼ね合いから、E257系に置き換えられたときに編成がどうなるのかは不明です。現在の中央線(松本)の編成(9両+2両編成)がそのまま転属される可能性もありますが、東海道線は基本的に10両+5両編成なので、編成の組み換えが行われるのではないでしょうか。

具体的には、現在の11両編成から、単独電動車(1M車)のモハE257形1000番台を抜けば10両(基本8両+付属2両)になります。また、ユニットのモハ1組を抜けば9両(基本7両+付属2両)になり、基本編成は現在の185系7両編成と(同じ大宮所属の651系とも)組成がそろいます。

現在の付属編成の置き換えについては、幕張で余剰気味のE257系500番台が5両編成なので、そのまま置き換えることもできます。500番台については報道でも取り上げられていないので、中央線の0番台を組み換えて付属編成をつくりだすのかもしれません。

0番台の付属2両編成については、東海道線では残す必要がないかもしれませんが、残しておけば繁忙期や混雑時間帯では連結し、閑散時間帯では外すといった柔軟な運用もできます。例えば、昼間の「踊り子」では付属編成を外し、「湘南ライナー」では付属編成を連結する、といった具合です。

また、普通車・グリーン車合造車のサロハE257形は、東海道線転属時に全室グリーン車に改造されるかもしれません。東海道線は古くからグリーン車連結の普通列車が運転され、利用も多いため、登場当初は普通列車兼用だった185系には現在でもグリーン車が2両連結されています(位置もE231系・E233系と揃い4・5号車です)。グリーン車需要の旺盛な路線なので、半室グリーン室ではニーズに応えられないと思います。

いずれにしても、短編成でもよい「踊り子」と、比較的長編成が求められる「湘南ライナー」とで編成のバランスを求められそうです。

185系がE257系へ換わってからのJR東海直通などの運用について

現在E257系は中央線や房総各線で走っていて、JR東日本管内のみの運転です。

しかし185系にはJR東海へ直通する運転も組まれています。E257系に置き換わったら、この直通運転はどうなるでしょうか。

修善寺「踊り子」のJR東海への直通運転は?

現在「踊り子」号では、東京〜修善寺間の列車でJR東日本とJR東海をまたいで運転されています。JRも発足して30年が経ち、JR旅客会社間を直通する列車は年々減っていくなかでも、現在でも毎日運転されています。

しかし東海道線では、熱海を直通する普通列車は朝夕のみになり、「踊り子」も平日は2往復になっています。

JR東海は本音では修善寺「踊り子」の運転をやめたいのかもしれませんが、そうなるとカギとなるのは伊豆箱根と沿線自治体です。

E257系に置き換えたあとも、修善寺まで直通させたいという伊豆箱根と沿線自治体側の熱意にかかっていそうです。JR東海といえども自治体の意向は無視できないでしょうから、短距離で少ない本数でも今までどおり修善寺まで「踊り子」が直通できるかもしれません。存続する可能性は高いと思います。

「ムーンライトながら」の将来は?

「踊り子」は短距離だったからまだよくても、問題なのはこちらの方です。

快速「ムーンライトながら」は大垣夜行を発祥とする夜行列車ですが、臨時列車になってからすでに8年、しかも年々運転する日数が減りつつあります。

臨時列車になってからはJR東日本の車両で運転され、現在は185系10両編成で運転しています。「踊り子」などとは異なる波動用編成の4両+6両編成(グリーン車なし)です。

「踊り子」と状況が違うところは、JR東海の方が距離が長く(熱海〜大垣間305.4キロ、東日本側は東京〜熱海間104.6キロ)、臨時列車で、しかも乗務員負担の大きい夜行であるところです。

「ながら」にもE257系を導入するとしたら、JR東海での乗務員訓練が必要になります。年に3回(春・夏・冬)の季節だけの運転で、静岡地区は深夜に通って乗り降りする人もごく少なく負担だけが重くのしかかります。自社線内でうまみの少ない列車を残すメリットはあまりないように見えます。まして「ながら」の利用者の大半は正規運賃ではなく、乗車距離が長くなるほど会社にとって利益の減る、いわゆる「18キッパー」です(乗る人にとって長く乗るほどおトクというのは、鉄道会社にとっては損が増えるということです)。私も18きっぷを使って「ながら」や大垣夜行に乗ったことがあるので大きな声では言えませんが。

「ながら」の運転日数が減っているのは、利用者数が減少傾向(高速バスへの移行や、18きっぷを使った旅行者そのものの減少?)なのと乗務員負担が重いことが原因だとしたら、185系置き換えの時点でJR東海側から廃止を申し出てもおかしくない気がします。

幸いにも185系の置き換えは、現時点ではJRからの正式な発表はなく報道のみなのですぐに「ながら」が廃止される訳ではないと思いますが、時が経つにつれて廃止のリスクは高まっていくと思います。

「はまかいじ」はどうなる?

185系の波動運用には、ほぼ毎週の土曜・休日で運転されている、特急「はまかいじ」があります。横浜駅から、横浜線を経由して中央線へ直通し、横浜~松本間を運転しています。

185系の波動用モノクラス(普通車のみ)6両編成で運転されています。この「はまかいじ」は横浜線を経由したのち、横浜駅は京浜東北線のホーム(3・4番ホーム)に発着するため、車両は京浜東北線で運用されているデジタルATC搭載車が限定で使用されます。このため、185系の6両編成の一部(B3~B5編成)にはATCが積まれ、週末は「はまかいじ」に使用されています。

185系すべてがE257系に替わると、ATCを積んでいないE257系では「はまかいじ」の運用に就くことができません。このため、「はまかいじ」を引き続き運転するためには、E257系の一部編成へデジタルATC搭載工事が必要になります。

波動用編成を、臨時列車以外にも団体専用列車で使用することを考慮すると、ATCを積めばATC使用線区への入線もできるので柔軟な運用ができます。

しかし「はまかいじ」は最近は利用が低迷しているとの話も聞いたことがあります。かつては横浜方面から山梨や長野へ向かうのには道路事情がよくなく、高速に乗るまで延々と1時間以上も一般道を走る必要がありました(横浜市内から、保土ヶ谷バイパス→国道16号→八王子バイパス、または町田街道を通って八王子インター(町田街道経由の場合は圏央道高尾山インター)から中央道で山梨方面へ)。しかし東名高速と中央道が圏央道(海老名JCT~八王子JCT)によって結ばれたため、一般道は自動車専用道の保土ヶ谷バイパスだけで済むようになり、楽になったと思われます。

現在では土曜・休日に横浜~甲府間で高速バスも走っています。行楽目的であれば、列車よりもクルマの方が小回りが利きますし、横浜と甲府の都市間でも安い高速バスがあれば、列車からは離れてしまうでしょう。「はまかいじ」が今後いっそう利用が低迷するようなことがあれば、運転取りやめになることもあります。利用頻度の少ない線区向けにわざわざ車両の改造工事をするとも思えないです。

185系がE257系に置き換わったあとも「はまかいじ」の運転が続けられるには、何よりも多くの利用があることが前提条件だと思います。

※時刻表による正式な列車名は「はまかいじ号」です(本文中では「号」を省略しました)

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