ダイヤ改正を前に、3月16日(金)限りで定期運用から引退するJR東日本の特急「スーパーあすざ」用車両E351系。
引退を前にしての乗り納めということで、3月1日(木)に短いながらも新宿~甲府間に乗車してきました。
3/16で引退のE351系に乗車
1993年に登場したE351系。1994年からは、中央線で初の“スーパー”を冠する列車として特急「スーパーあずさ」の運転もE351系で開始され、エースとして中央線に君臨してきました。しかし昨年(2017年)12月23日より、新型車両E353系が「スーパーあずさ」で運転開始され、3月17日のダイヤ改正で「スーパーあずさ」はE353系に統一されE351系は引退となります。
当初は定期運用撤退後に波動輸送用に転用されるといった報道もありましたが、全車引退(=廃車)となる見込みです。
引退が近づく中、以前から乗車しておきたいと思っていたところでしたが、3月1日に機会を得ることができたので、新宿駅12:00発「スーパーあずさ」15号の新宿~甲府間に乗車してきました。
新宿駅に到着する、松本からのスーパーあずさ6号。この日は篠ノ井線内倒木の影響で約20分遅れで到着。東京では春一番も観測された風の強い日でした。
東京行きなので、さらに東京駅まで走り、折り返して新宿から今回乗車するスーパーあずさ15号になります。
新宿駅停車中/外観
新宿駅で発車待ちのスーパーあずさ15号。この日は量産先行車の1000番台・S1+S21編成でした。
側面の行先表示器。方向幕で、E351系と同時期に投入された255系やE217系がLEDに交換されているのに対して、最後まで幕式でした。LED式の表示器が多くなった現在では貴重になりつつあります。
先頭車の運転室付近。高運転台で、運転室の窓下に“AZUSA”の文字が入っています。運転室の後ろの屋根付近は塗装がはがれて傷みがあります。E351系は経年の割には車体の傷みが目立つ印象です。
今回乗車する7号車のデッキ(松本寄り)。これから乗り込みます。
E351系の普通車内装
デッキ部分はベージュ色のやわらかい合成皮革的な壁紙で覆われています。当時、従来の183系「あずさ」より上位の列車用ということで、おそらく高級感を醸し出す狙いがあったのかもしれません。
しかし現在となっては、こすれてできた汚れが目立ち、所々剥がれていたりもします。化粧板であれば汚れのふき取りも比較的簡単かもしれませんが、やわらかい壁紙にしたことが仇となった感じです。
以下、乗車した7号車(普通車指定席)・モハE350-1101の車内です。
デッキに貼られた車内(編成)案内です。ステッカーより上の方で壁紙が剥がれています。
デッキ部分の車号表示(新宿寄り)。ステッカー式です。
デッキよりさらに車端部には、公衆電話が設置されていたようなスペースがあります。
デッキから車内に入ったところ、量産先行車の普通車車内です。窓部分の柱が天井に向かって内側に傾いているのは、E351系が振子式車両で箱型よりも卵型の断面をしているためです。
ネットで検索すると「狭い」といった口コミが目立ちますが、個人的にはそれほど狭さは感じませんでした。
しかし目についたのは車内が黄色いことで、元・喫煙車だったことがうかがえます(タバコは吸わないです)。乗ってデッキに入ったときに感じてはいましたが、外観が白いだけに中に入ると黄色さが目立ちます。さすがに全車禁煙化から10年経つのでニオイはしませんが……
デッキに続くドアの上には、3色LEDの車内案内表示器が設置されています。
今回の座席は車両中央付近・進行方向左側の11Dです。車両中央を選んだのは比較的揺れが少ないからです。乗り物酔いにあまり強い方ではないので……
量産先行車・普通車の座席です。モケットはA・C席がグレー、B・D席がうすむらさきです。あらためて写真で見るとそうでもないのですが、実際乗ったときはくたびれた印象がありました。
製造された90年代は、一般車両では209系以来硬い座席が増えてくる時期ですが、特急車両はそうでもなく座り心地は悪くなかったです。
座席背面にはポケットとドリンクホルダー。テーブルは左右のひじ掛けの中に収納されています。ひじ掛けの前面にある縦長の白い四角い部分は、かつて灰皿があったところと思われます。現在は白いプレートでふさがれています。
フットレストは装備されていないのですが、後日ネットで調べてみたところ量産車には設置されているようです。
中央線の特急は高速バスとの競合が厳しい路線ですが、普通車でもシートピッチに余裕があるのは列車ならではです。
テーブルがひじ掛け内収納で大きくないからか、窓枠の柱部分にも小さなテーブルが設置されています。
カーテンはフリーストップ式で上下に動かしますが、経年からか建付けはよくなかったです。
せっかく富士山側の座席なので、車窓を堪能
正午に新宿駅を静かに発車していきました。
平日の昼どきということもあり乗車率は低めで、乗った7号車ではおよそ2~3割といったところでしょうか。行楽目的の方は皆無で、ほとんどはビジネスか所用の方と思われました。
高尾駅までは快速電車が多いのでスピードは控えめです。特に三鷹駅までは停車しない分、快速よりも遅く感じました。
中野駅を過ぎ、立川駅までの長い直線区間に入ると、23区内からでも富士山が見えるようになります。建物に隠れがちですが、思っている以上に大きく見えます。やはり車窓から富士山が見えると昂ぶります。
三鷹駅を過ぎ郊外に入ると、より富士山が見えやすくなります。かつては地上でしたが、高架化されたのがより富士山を望めるようになったと思います。写真は武蔵境~東小金井間の車窓から望む富士山。ちなみに東小金井駅といえば、もはや中央線でも有名な撮影地となった感じですが、他の駅も含めてE351系を撮られる方が平日にもかかわらずいました。
八王子駅を過ぎると振子が動作するようになります。実際のところカーブが増えるのは高尾駅から先なので、実質高尾駅を過ぎて山の中に入っていくと振子が動く感じです。
振子が作動すると、足元から左右に振られる感覚です。この足元がおぼつかない感じが酔いを起こすのかと思いますが、制御付きということもあり下を向いていなければひどく酔うことはないかと思います。振子式車両に乗ったのは久しぶりですが、381系に比べると制御付きはやはり楽です。
特急列車らしいスピード感もあり、八王子~甲府間86.7キロを無停車で所要57分なだけはあります。山岳区間にもかかわらず平均速度は時速約91.3キロで走り抜けます。
山梨県内に入ると、周りは山に囲まれます。山が間近に迫ってくるために、富士山に近い上野原や大月付近では富士山を望むことはできないです。写真は四方津~梁川間。並行する道路は甲州街道(国道20号)です。
笹子トンネルを抜けた先、勝沼ぶどう郷駅を過ぎると視界が一気に開け甲府盆地が広がります。
塩山駅を過ぎ、進路を南西に向けると再び富士山が見られるようになります。
甲府駅に到着
新宿駅から1時間28分で甲府駅に到着です。列車はこの先松本駅まで行きますが、ここで降ります。
E351系で登場した「あずさ」のイメージマークともお別れです。乗車位置案内ではE351系・E353系両方の「スーパーあずさ」の案内がされていますが、2つが共存したのはわずか3ヶ月弱となります。
松本に向けて発車していくスーパーあずさ15号。松本までの100キロあまり、高原へ向け力強く駆け抜けるさまを見られないのは残念。この先も車窓の眺めがいいのですが、それはまたの機会で。
E351系に乗車してみて
E351系の登場は1993年なのですが、傷みのある外観もですが内装の劣化が想像以上に進んでいたのに驚きました。振子式車両でスピードアップを図ったのはよかったのですが、内外装ともに老朽化が早く進行したため大きな更新も行われないまま引退となるのは残念です。もっとも実際に乗ってみると引退やむなしといったところもわかります。
JR東日本の量産された在来線車両で形式の頭にEがついた系列の引退ははじめてというのも残念な点です。定期列車での活躍はあと2日となりましたが、残りわずかな期間、最後の活躍を願っています。
乗車データ
- 乗車列車:特急 スーパーあずさ15号(列車番号15M)
新宿発(12:00発)/松本行き(14:35着)(停車駅:立川・八王子・甲府・小淵沢・茅野・上諏訪・塩尻) - 乗車区間:新宿→甲府間(13:28着)
- 乗車日:2018年3月1日(木)
- 乗車車両:7号車・普通車指定席(モハE350-1101)
- 編成:松本車両センター(長モト)所属/E351系 S1+S21編成(8+4両編成)