JR東日本が、武蔵野線で活躍する205系車両のインドネシアへの譲渡を発表しました。E235系の山手線への投入による車両転属の一環にあたり、2020年までに海を渡ります。
武蔵野線へはE231系0番台が転入してきますが、8両編成の205系が姿を消すと、JR東日本管内の205系は1編成で4両以下の短編成のみとなります。首都圏の通勤路線では、国鉄からJRへと移行期のシンボル的な車両の長編成が見納めになります。
武蔵野線の205系が2020年までに海を渡りインドネシアへ
JR東日本が205系336両を、インドネシアのジャカルタ首都圏で都市鉄道を運行するPT Kereta Commuter Indonesia(インドネシア通勤鉄道会社、以下PT KCI)への譲渡を発表しました。この336両は、現在武蔵野線で運用されている205系の全車両(=8両×42編成・京葉車両センター所属)に相当します。
PT KCIにはすでに横浜線・南武線などから205系が大量に譲渡されています。武蔵野線用205系の譲渡は3月初旬から始まり、2020年までに行われる予定です。
通常の前面も、メルヘン顔も海外へ
武蔵野線には通常仕様の0番台(界磁添加励磁制御)と、VVVFインバータ制御に改造された5000番台が走っています。
他線からの転入が多い武蔵野線の車両ですが、数少ない1991年に新製投入された先頭車両は京葉線に投入された205系と同様のデザインで、いわゆる「メルヘン顔」を持っています。メルヘン顔は0番台が多いですが、1編成だけ5000番台に改造されました。
5000番台唯一のメルヘン顔・ケヨM35編成
JR東日本205系 各駅停車 府中本町行き 千ケヨM35編成 クハ204-145 @西国分寺 17-12-30
その後、103系の置き換えとして、山手線や埼京線などから大量に205系が転入してきました。武蔵野線用の0番台は京葉線内の地下トンネル対応としてMT比が高い(6M2T)のですが、転入車はそのままだと電動車(M車)の不足が見込まれたため、4M4Tでも0番台6M2Tと同様の出力を確保するためVVVF化改造されたのが5000番台です。改造されたのはM車のみのため、T車の番号はそのままです。
先頭車両はドアの窓が小さい元山手線車両
JR東日本205系 各駅停車 府中本町行き 千ケヨM13編成 クハ204-8 @西国分寺 17-12-30
5000番台はひとつの編成をまるごと改造したのではなく、さまざまな路線から寄せ集めた上で改造していますが、ドアの窓が小さい車両は元・山手線の車両です。
これらの編成すべてがインドネシアへ譲渡される予定です。2020年までには姿を消す見込みなので、乗車・記録しておきたい方はお早目に。2020年春ごろ(後述)というと、あと2年で置き換えということになります。
2020年までに、武蔵野線は205系からE231系0番台に置き換え
武蔵野線の205系の後任には、中央・総武緩行線(中央・総武線各駅停車)からE231系0番台が転入してくる予定で、すでに2本が京葉車両センターに転入してきました。
中央・総武緩行線のE231系0番台の武蔵野線への転出は、山手線へE235系の投入により既存のE231系500番台を中央・総武緩行線へ転出させることによります。
E235系の投入は2020年春ごろまでの予定です。このため、山手線→中央・総武緩行線→武蔵野線→PT KCI、と車両が玉突き的に移ることで、現在武蔵野線で運用されている205系が譲渡され海を渡るのも2020年までとなっています。
E235系、E231系0・500番台、武蔵野線の205系(0・5000番台)の動きをまとめると、次のようになります。
- 現在の主要路線
- E231系500番台:山手線(一部は中央・総武緩行線へ転出済み)
- E231系0番台:中央・総武緩行線(一部は武蔵野線へ転出済み、八高・川越線へ3000番台に改造され転出予定)
- 205系0・5000番台(8両編成):武蔵野線
- 2020年までに実施予定の転配
- E235系が山手線に新製投入
↓ - E231系500番台が山手線から中央・総武緩行線へ転出
↓ - E231系0番台が中央・総武緩行線から、武蔵野線(0番台のまま)と八高・川越線(3000番台へ改造の上)へ転出
↓ - 205系が武蔵野線から、インドネシアPT KCIへ譲渡
- E235系が山手線に新製投入
205系8両編成も首都圏通勤路線では見納めに
武蔵野線は8両編成が走っていますが、205系の武蔵野線からの撤退は、首都圏の通勤路線で205系を見られなくなることになります。
首都圏での205系は、武蔵野線以外では次の路線で走っています。
- 八高線・川越線:4両編成(3000番台・改造車)
- 鶴見線:3両編成(1100番台・改造車)
- 南武支線:2両編成(1000番台・改造車)
- 宇都宮線ローカル・日光線:4両編成(600番台・改造車)
- 相模線:4両編成(500番台)
600番台が宇都宮線ローカル運用(小金井~宇都宮~黒磯間)で、2本つないだ8両編成で走ることがありますが、武蔵野線から205系が撤退すると、1編成あたりでは最長でも4両となります。なお、首都圏以外のJR東日本管内では、仙石線で3100番台(改造車)4両編成が走っています。
このため、東京に近い通勤路線では最長でも4両編成となり、8両の長編成を見ることができなくなります。国鉄末期に投入開始され、JRへ移行後も投入され続けた、国鉄からJR移行期のシンボル的な車両の長編成が見納めになるのは世代交代が進むことを意味します。世代が代わるのは寂しい点もありますし、東京メガループの強化を謳っている割には武蔵野線に新製投入があまりないのも気になります。武蔵野線への車両の新製投入は、E231系0番台に交代した後でも期待していきたいです。
他には少ない半地下構造の駅があるのも武蔵野線の特徴
JR東日本205系 各駅停車 府中本町行き 千ケヨM21編成 クハ204-60 @新小平 17-12-30
- JR東日本 ― インドネシアの鉄道事業者への車両譲渡について(PDF 318KB/2018年2月28日)
- JR東日本 ― 山手線用車両の新造計画について(PDF 465KB/2016年6月8日)