北陸新幹線延伸が小浜-京都ルートに。並行在来線など今後の問題点は?

てつトピてつコラム路線

将来、北陸新幹線を大阪まで延伸するにあたって、どのあたりを通るルートにするか検討がされていましたが、このたび、小浜-京都ルートを採用すると報じられました。

ここで、直近で検討されていたルートの確認と、今後ルートを具体的に決める際に問題となる点を考えてみました。

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3つのルートと決定の経緯

北陸新幹線の未着工区間・敦賀〜大阪間において、2016年12月14日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)の下部組織の検討委員会は小浜-京都ルートを採用するとしました。
<参考:時事ドットコム「小浜・京都ルートで決着=北陸新幹線延伸-与党検討委」

北陸新幹線延伸ルート

国土交通省が検討していた3つのルート。
<出典:国土交通省「北陸新幹線敦賀・大阪間のルートに係る調査について」(PDFファイル)>

なお、ここでいう「大阪」とは、大阪駅ではなく、都市としての大阪を示しています(敦賀側は、敦賀駅です)。

まず、どのルートが候補になっていたかをおさらいしてみます。

(1) 小浜-舞鶴-京都ルート

上の図の赤線のルート。敦賀駅から、福井県小浜市・京都府舞鶴市と若狭湾沿いを経由し、京都駅を通って新大阪駅に至るルートです。

建設延長距離は約190km、建設費は約2兆5000億円、所要時間は約1時間。費用対効果の指数(B/C)は0.7。

(2) 小浜-京都ルート

上の図の橙色のルート。敦賀駅から、福井県小浜市を経由してから直接京都駅に向かい、新大阪駅に至るルートです。

建設延長距離は約140km、建設費は約2兆700億円、所要時間は約43分。費用対効果の指数(B/C)は1.1。

(3) 米原ルート

上の図の緑色のルート。敦賀駅から、東海道新幹線の米原駅に向かうルートです。関西方面へは米原駅で乗り換えの予定。

建設延長距離は約50km、建設費は約5900億円(以上敦賀~米原間)、所要時間は約1時間7分(敦賀~新大阪間)。費用対効果の指数(B/C)は2.2。

各ルートの比較

小浜-舞鶴-京都ルートは、人口9万人弱の舞鶴市を通ることから沿線経済への寄与はあるかもしれませんが、図の通りかなりの大回りです。B/Cも0.7と、費用の方がが便益(利益)を上回ってしまいます。

小浜-京都ルートは、3つの中では最も直線的に結び、関西~北陸の接続という意味では最適です。しかし、小浜から京都に至る間に長いトンネルを掘る必要があり、沿線人口にも恵まれません。

米原ルートは、建設費は最も安く、また3ルートの中で唯一名古屋方面との速達性アップも期待できますが、乗り換えが必要なのが面倒です。B/Cは2.2と、かなりメリットがあるように見えますが、乗り換えが必要となると利用者は面倒がって伸び悩むかもしれません。

3つの中から、小浜-京都ルートに決定。

この3つのルートを検討した結果、小浜-京都ルートが12月7日に採用方針決定、12月14日に採用決定、12月20日に正式決定(予定)となりました。

先の時事の記事では、「乗車時間の短さや利用者の利便性を総合的に勘案した」と検討委員会委員長の西田参院議員も話しています。関西~北陸間の利便性を考えると、大回りとなる小浜-舞鶴-京都ルートは論外なのはもちろん、米原ルートも乗り換えがネックとなり、小浜-京都ルートに決まったのは妥当でしょう。

米原ルートは、東海道新幹線に直通できれば優れたルートだったかもしれませんが、JR東海は反対していて、直通案はほぼなくなっていたのもあります(個人的にはこれが最良だったと思っていました)。
<参考:産経WEST「『米原での乗り入れ困難』 JR東海社長、北陸新幹線」

何はともあれ、敦賀~大阪間は小浜-京都ルートに決まりました。

今後のルート展望

ルートが決まったとは言っても、大まかなルートだけで、具体的にどのようにルートを描くかが決まったわけではないです。

焦点となるのは、

  1. 小浜市内新駅の小浜線接続
  2. 初めてのケースとなる並行在来線問題
  3. 京都~新大阪間のルート

の3つです。

小浜線とは接続すべき。

まず、1つ目の在来線・小浜線との接続についてです。

上図の出典元にもある国交省の中間とりまとめ(2016年4月)では、小浜市内の新駅は「東小浜」となっています。小浜線には、小浜駅の東隣に東小浜駅があるのですが、この資料では現在の東小浜駅なのかどうかは不明です。別の駅を設置する可能性もありますが、ここは是非とも小浜線との接続駅を設けてほしいと思います。


現在の東小浜駅の位置。

小浜線と接続させれば、沿線利用はもちろん(舞鶴ルートでは外れた舞鶴方面にとっても速達性が向上するかもしれません)、現在飯山駅で接続している「おいこっと」、新高岡駅で接続している「べるもんた」のような観光列車を走らせて観光客を呼び込むこともできるかもしれません。原発頼みの嶺南地域の呼び水にしてほしいものです。

並行在来線になる湖西線は、上下分離で引き続きJRが運行を。

次に、2つ目の並行在来線問題についてです。

並行在来線とは、整備新幹線(今後建設される新幹線路線はすべて整備新幹線です)と並行して以前から存在している在来線路線のことです(詳しくはググってみてください)。

これまでは、沿線自治体に「新幹線ができて恩恵を受けられるから、代わりに在来線は引き取ってよ」といったスタンスで、長野新幹線以降は県が受け皿となり、第3セクターの鉄道会社をつくって引き続き運営してきました(九州新幹線の並行在来線である肥薩おれんじ鉄道をのぞき、すべて県単位で並行在来線を引き受けています)。

しかし、北陸新幹線の小浜-京都ルートでは、前例のない並行在来線ができてしまいます。

北陸新幹線が京都まで開通すると、山科駅~近江塩津駅間の湖西線が並行在来線となり、JR西日本は分離すると言われています。

湖西線とは、現在は特急サンダーバードが駆け抜ける、関西と北陸を結ぶメインルートです。京都市内の山科駅を起点としますが(列車はすべて京都駅へ直通)、他の駅はすべて滋賀県内に位置します。線名は、文字通り琵琶湖の西岸に沿って走ることが由来です。

このように、湖西線はほぼ滋賀県内を走るのですが、ちょっと思い出してみてください。小浜-京都ルートでは、福井県の小浜市から、直接京都府に入り、京都市を目指すルートと考えられています。このルート上に、滋賀県は出てきません。ルート次第によってもしかしたら滋賀県内を通るかもしれませんが、駅は設置されない予定です。

こうなると、滋賀県は新幹線の恩恵を受けないのに、並行在来線を引き受けることになってしまいます。実は滋賀県は米原ルートを推していたのですが、このことが念頭にあったのかもしれません。

どのようにして小浜-京都ルートの並行在来線問題を解決するかわかりませが、解決策としてひとつ挙げたいものとして、上下分離方式があります。湖西線の設備は滋賀県(または県出資の第3セクター鉄道)に譲るものの、運行は引き続きJR西日本が担うものです。

新幹線の恩恵を受けない滋賀県は、今までのやり方ではおそらく湖西線を引き受けないでしょうし、県民も素通りどころではなく県内を通らない新幹線のために税金を払いたくはないでしょう。上下分離は私の個人的な考えに過ぎませんし、できるならば今まで通りJRが保有と運行の両方を行うのがいいと思いますが、小浜-京都ルートの並行在来線問題は今までにない解決策を求められるのは間違いないでしょう。

学研都市に駅を置いて、はたして利用者は伸びる?

最後に、京都~新大阪間のルートについてです。

この区間は、検討委員会でも与党PTでも、まだルートは決まっていません。

最初の図を見ていただくと、北回りと南回りの2つがあることがわかると思います。従来は北回り(大阪市箕面市付近を経由)だけでしたが、2016年4月の委員会で、関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)を経由する案が追加されました。

南回りだと、建設費で約2000億円、所要時間で約3分(距離にして約10km)延びる試算ですが(国交省の中間とりまとめによる)、沿線活性化が期待できるとしています。

しかし、奈良県知事が負担増を理由に南回りに反対したことから、学研都市を通りつつも奈良県内を通らずに大阪へ向かうルートになりそうです。先の時事の記事によると、京都府京田辺市内に新駅を設置するとしています。
<参考:日本経済新聞「奈良知事、北陸新幹線『南ルートに反対』 京都―新大阪で」

個人的には、3分程度であればどちらでもよいですが(そもそも北陸新幹線自体が長野県内では蛇行するルートを取っていますし)、そもそも学研都市内に駅を設置しても大阪や京都からは近すぎるので利用者は伸び悩む気がします。

今後の交通政策はユーザーベースで。

北陸新幹線は、延伸区間においては関西から北陸を速く結ぶ目的があります。また、本来の役目のひとつとして、東京~大阪間の東海道新幹線のバイパス線としての役目もあります。

これらの目的を念頭に置きつつも、利用する人にとって利便性にすぐれたルートを決定してもらいたいと思います。

当初予定されていた小浜ルート(小浜市から京都市を通らずに大阪へ向かうルート)が小浜-京都ルートに変更されたように、利用者目線で立った決定を願っています。舞鶴ルートは露骨な我田引鉄でしたが、政令指定都市の京都を素通りする小浜ルートもどうかと思っていたので、今のところは大きく外れていないと思います。

今後、北陸新幹線以外の交通政策の決定においても、利権などではなくユーザーベースを基準にしてほしいものです。

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